シオンの風
第132号
事業所統括部長 保
日本の介護保険制度は、国民皆保険制度と同様に海外からも見本とされている社会保障制度です。指定権者の許可を得た事業者が、ある一定の要件のもとで参入できる産業構造といえます。その中のデイサービスにおいては、利用料金の単価は一律平等であり、各加算事項への算定如何を除いたら、純粋にサービスの質で事業者間競争することになります。一言でサービスの質と言っても、そこには建物設備・雇用人材に対する投資によっても影響されます。初めて施設サービスを利用する方の「ここを利用したい」との決め手としては、どのようなものがあるでしょう。
・知人や友人等から事前にその施設の評判を聞いていた
・かかる医療機関(居宅やソーシャルワーカー)から、関係先のサービスを勧められた
・暮らしの動線の中に気になるサービス事業所があった
・見学対応したスタッフを通しての心証と施設内雰囲気に対する安心感
激化するサービス事業者間の競争下にあって、過度な広告宣伝は逆効果となる可能性があります。サービスを利用する側にとっても選択肢が増えており、周囲には的確にアドバイスしてくれる方が結構存在している時代だからです。一番の広告手法は、普段の私たちのケアを、ご利用者のご家族や担当ケアマネ(主治医など)がどれだけ知らされているのかということ、そして80名近い従業員が自らの仕事にどれだけの思いを有しているのかということ、さらに従業員一人一人が地域に暮らす高齢者や障害ある方に対して、どれだけ日頃から関心を示しているのかということが分かれ目だと思います。次にご家族の立場になって、デイサービスを利用する上で期待していることとは、どのようなものがあるでしょう。
・身体機能や認知機能が維持できて元気でいてほしい
・自分の仕事や家庭との両立のために、通える、泊まれる、住める場所がないか
・一緒にいることのストレス、ご本人が一人家で過ごすことへの不安の解消など
最後に、ご本人やご家族側が介護サービスの利用を必要としながら、思いとどまる弊害があるとすれば、何が要因となっているでしょうか。
・近所や地域の目あるいはご家族やご本人の施設サービス利用に対する羞恥心
・自分はまだそのレベルにはないとの思いと抵抗
・集団でのコミュニケーションそのものが苦手
・別の事業所にサービス変更したいけど、とりあえずは慣れたところで我慢
・利用料のこと、リハビリ訓練だけをしたい、周囲からインプットされたイメージなど
以上のことから介護保険サービスを利用する前提としては、現代でも相当な覚悟とご家族からの説得による格闘があるということです。多くの場合、実際に施設サービスを利用開始する段階にあっては、ご本人の要介護状態はかなり進んでいることが多いと言えます。介護サービスの潜在的な利用ニーズは、実は相当あるだろうというのが私自身の思うところです。病気や障害を通して、誰かのケアをやむを得ないとして受容していく過程には時間がかかるものです。日頃より「シオンの家」という存在の選択肢を対外的に示しておくことは、高齢者の健康的な暮らしを守る働きとして、重要な取り組みと感じております。
山口先生による機能訓練の様子です。
皆さま笑顔で参加され、「気持ち良かったね~」と満足気で、スタッフもとても勉強になりました。